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[絵本] ウエスト・ウイング/エドワード・ゴーリー ヴィクトリア朝時代と思しき頃の人々を登場人物に、ブラックユーモアと言葉遊びをたっぷり盛り込んだ絵本で知られるアメリカの絵本作家エドワード・ゴーリー。アルファベット歌に乗せて子供達が死にまくる『ギャシュリークラムのちびっ子達』などをご存知の方も多いかと思う。 この絵本の舞台はウエスト・ウイング(西棟)、それ以上のことは何も分からない。ただただ、何かが起きていたり、何も起きていなかったりする部屋部屋だけが、エッチングに似た重く陰鬱なペン画で描き出されている。ページを捲るたびにより奥へと踏み込んでいくような感覚に捕らわれ、ゴーリーのほかの作品には見られない怖さを味わうだろう。 捲れたカーペット、浮遊する壷、そこはかとない悲劇の痕跡……全てを密やかに内包する、どこかのウエスト・ウイング。 |
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[映画] J.S.バッハ G線上の幻想/ヤン・シュヴァンクマイエル 長さ10分弱のこのフィルムに説明する粗筋があるとすれば、最初のほんの数分だけだろう。一人の男が町の中の建物に入り、奥へと進んでいく。モノクロの暗い映像からは、そこがかなり荒廃した建物で、複雑なつくりをしていることが分かる。扉をくぐり、階段を上り、男は鍵を使ってまた扉をくぐる。帽子やコートを脱いでいるところを見ると、どうも此処は彼の部屋らしい。男は部屋の隅にあるオルガンへ歩み寄り、上に並べられた林檎のような果実をかじると、それを咥えたまま演奏を始める。パイプオルガンの荘厳な音が響き渡り、一挙に見るものの聴覚を満たす。 カメラは男の演奏をBGMとして、壁を次々に写していく。ひび割れ、塗装が捲れ、波線が刻まれ、インクのような染みに黒く染まり、針金がねじ込まれ、削り取られ、穴を穿たれ、漆喰が盛り上がり、切り裂かれ、煉瓦が崩れ……アニメーションの魔術師シュヴァンクマイエルによって生命を吹き込まれた建物は、肉片や人形といったものよりいっそう非・生物的な生物と化し、見るものに恐怖に近い驚きを与える。長い年月を経た鉄格子、郵便受けの中に詰まった石、ゆっくりと開く扉の奥のまったき闇。やがてカメラは扉の奥の部屋へ、その先の外へ、ひびだらけの建物の表面へ、朽ちたアスファルトへ、なだらかに続く石畳へと走り出す。そしてまた映し出される朽ちた壁、穿たれる穴……最後に幾つか写る窓がとても恐ろしいのはなぜだろう? |
| [文学] V./トマス・ピンチョン 未読! 此方を参照。→松岡正剛の千夜千冊 第456夜『V.』トマス・ピンチョン |
| [文学] 蝿の王/ウィリアム・ゴールディング 未読! 此方を参照。→松岡正剛の千夜千冊 第410夜『蝿の王』ウィリアム・ゴールディング |
| HOUSE/大林宣彦 未鑑賞。此方を参照のこと。→炎のド名作邦画ベスト300 123位"HOUSE"‐文芸ジャンキーパラダイス 管理人氏曰く「今まで見た映画の中で"生理的に"最も怖かった"ホラー映画」。粗筋などを読む限りさほど良くできた映画のようには思えないのだが、何故かAmazonのレヴューでも高評価が目立つ……。 |